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        肥満とメタボリックシンドローム
                                               東京逓信病院 内科部長
                         宮 綺   滋
 本日はお忙しいなか,東京内科医会市民セミナーにご参加下さいまして,大変ありがとうございます.
 本日は肥満とメタボリックシンドロームについてお話させて頂きたいと思います.
 ここ1,2年の間に「メタボ」という言葉があちこちで聞かれるようになりました.「メタボ」とはメタボリックシンドロームの略称ですが,「メタボ」というと最近は太った人,お腹の出た人という意味のように使われています.
 しかし,本来の正しい意味でのメタボリックシンドロームを御存知の方は意外と少ないのではないかと思います.今日はメタボリックシンドロームとは何か,その危険性はどんなものかをお話させて頂きます.
   1.肥満−その原因と健康への影響−

 まず,肥満についてですが,食べて運動しなければ太り,よく活動し食事に気を付ければやせます.大変簡単な理屈ですが,理解はできても実行が難しいのが問題です.
 太るかやせるかは,食べた量(エネルギー)から運勤した量(エネルギー)を引き,(+)なら太り,(-)ならやせます.つまり,このバランスを(-)にすればよいわけです(図1).
 BMT25以上(BMIとは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値)であれば肥満と判定されますが,日本人はこの50年間BMIが増えてきています.特に男性は全ての年代で,女性は中高年で増えています.
 その結果どうなったかというと日本人の30%は心血管疾患と脳血管疾患という動脈硬化が原因の病気で亡くなっています(図2).では,昔からそうだったかというと,第二次世界大戦前,死亡原因の上位は肺炎,結核などの感染病でしたが,戦後抗生物質の発展や経済の高度成長の結果,それが過食,運動不足となり,死亡原因が変わってきました.
 つまり,非衛生的で,低栄養,高活動性の時代から過栄養,低活動性の時代へとライフスタイルが変わったために,肥満の人が増え動脈便化,心臓病が増えたのです(図3).
 肥満になると動脈硬化以外にも,いろいろな病気になりやすいことがわかっています.しかし,肥満といっても,お腹がでっぱり内臓脂肪がたまるタイプと,お尻が大きく皮下脂肪がたまるタイプと2種類あります.内臓脂肪がたまると糖尿病,高血圧,脂質異常症,痛風,脂肪肝や心筋梗塞、脳梗塞が起こりやすくなり,皮下脂肪がたまると関節病,睡眠時無呼吸症候群,月経異常などが起こりやすくなります(図4). メタボリックシンドロームとは,この内臓脂肪がたまった肥満とほぼ同じものと考えてよいと思います.
   2.内臓脂肪とは? 病気との関係
ではなぜ内臓脂肪が増えると,このような病気が起こりやすいのでしょうか.食べすぎて
使われなかった脂肪は,脂肪細胞に貯えられ,食べ物がない時のためにストックします.これまで脂肪細胞は,余ったエネルギーを貯える倉庫のような細胞と考えられていました.ところが,この10数年前から脂肪細胞は身体の調節因子である多くの物質を作り出していることがわかりました(図5).脂肪細胞が脂肪を貯えこみ,このよ
うな物質が過剰に作られると かえって身体に対し悪影響が出ることがわかりました.
 特に内臓脂肪かたよると,血糖や血圧を上げ,脂質に異常を来たす物質が増えるだけでなく,直接動脈硬化を起こす物質も作り出します.その結果,心臓病(心筋梗塞),脳卒
中 (脳梗塞)を起こしやすくなります(図6).
 逆に,体重を減らしてやせることによって,脂肪細胞が小さくなります.脂肪細胞の働きがもとに戻り正常化すると,血糖や血圧を下がり,脂質に異常を来たす動脈硬化を引き起す物質が減り,糖尿病,高血圧,脂質異常症がよくなり,動脈硬化も起こりづらくなります.
   3.メタボリックシンドロームの予防,治療
 食べすぎ,運動不足でなったメタボリックシンドロームでは,食事に気を付け,運動を心がければ,内臓脂肪が減り,様々な病気もよくなり,心筋梗塞,脳梗塞を起こさないことが十分期待できるのです. では,どのようなことを心がければよいのでしょうか.メタボリッ
クシンドロームの治療法は「1に運動,2に食事,しっかり禁煙,最後に薬」です.現在の体重を5%減らすことで十分効果が出ます(図7).まず,生活習慣をよくし,それでも改善しない血糖,血圧,脂質異常があれば薬を服用します.薬で治すものではありません.
 内臓脂肪のたまりやすい生活習慣があれば改めましょう.摂取エネルギーを減らすためには,脂質,糖質を食べすぎないようにします.しかし,蛋白質,ビタミン,ミネラルは過不足なく食べる必要があります.
夜食,間食はやめるようにします.お腹一杯ではなく腹八分目にしましょう.食事も早食いをせず,いつまでもダラダラ食べないことも重要です(図8).
 運動では消費エネルギーを日頃の活動で増やしましょう(図9).スポーツだけが運動ではありません.筋肉トレーニングは基礎代謝を減らさないために重要です.運動でインスリンが効きやすくなり,血糖,脂質がよくなります.そして,身体を動かすことは大変爽快です.事故が起きないよう,徐々に強度を上げ,時間を延ばしていくのが大事です.
 食事,運動に気を付けて体重が減ると,内臓脂肪は皮下脂肪より速いスピードで減ることがわかっています.
 メタボ退治には毎日の食事,運動に気を付け,少しずつ良くなるよう心がけることが重要です.早速今日から始めて下さい.
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