都民の皆様表紙に
もどる
 2008年東京内科医会
市民セミナー
 2007年東京内科医会
市民セミナー表紙
                                            
パネルディスカッション「健診結果の読み方」
       血糖,LDLコレステロール,中性脂肪
                                   東京内科医会 常任理事,やたがいクリニック
                         谷田貝 茂雄
 皆さん,こんにちは.私は東京都荒川区でクリニックを開業している谷田貝と申します.場所は,日本相撲協会理事長のいらっしゃる武蔵川部屋から25メートルの距離です.
 テレビの宣伝で「余分三兄弟*」というのを放映していますが,これからその余分三兄弟(塩分,糖分,脂肪分)のうち,糖分と脂肪分に関してお話をします.
   1.尿糖の読み方

 おしっこの糖をとったときに,図1のように「+」「−]とか「+2]「+3]とか印刷されます.尿の中には,たんぱくや血液とかケトン体もこのようにプラスとマイナスであらわされます.
 血糖,すなわち血液の中に吸収された糖は,腎臓で一旦ろ過されるのですが,ある程度以上血糖が上がると,尿の中に漏れ出てきて「尿糖]となります.
 血糖が大体170 mg/dl 以上で尿糖が出現します,これを覚えておいてください.尿糖が出ていれば,一般に血糖は170 mg/dl 以上である.ただし例外として,血糖値が100 mg/dl程度でも尿糖があらわれる腎性糖尿というものや,風邪を引いているとき,妊娠中などでは尿糖があらわれることもあります(図2).
 したがって,尿糖が陽性(+)であれば血糖は170 mg 以上ということになります.
 また,図3のように当然食事をとると血
糖は上がったり下がったりするわけです.そして,血糖がもしも170 mg/dl 以上に上がれば,尿糖として出てくる可能性があります.
 尿糖も血糖も食事の影響を受けます.通常,正常な人は食後でも尿糖は陰性です.しかしながら,図3を見ると,糖尿病で血糖が170 mg/dl 以
上に上がる人でも空腹時では尿糖は陰性に出ることがあるので,糖尿病の方でも陰性に出ることはあります.尿糖は,食事をした後の一回ではかった血糖と違って,膀胱にたまった尿なので,食後高血糖という食事をした後の高血糖のよい指標となります.
   2.空腹時血糖と食後血糖の読み方

 健診のときに「今日,朝ご飯を食べましたか.ご飯を食べてから10時間以内ですか,10時間以降ですか.食後何時間ですか」と聞かれることがありますが,これは空腹時の血糖と食後の血糖では,血糖の評価が当然違うためです.
 空腹時血糖の正常値は110 mg 未満.ただし,110 mg 未満であったとしても,現在は厳しい基準で,100〜109mgは正常高値高血糖と評価されています.空腹時血糖が126 mg 以上であれば糖尿病型です(図4).
 食後高血糖,随時血糖,負荷後血糖,すなわち,ご飯を食べてからの血糖や,いつでもいいからはかった血糖や,決められた糖分(医療機関に行って「75gの糖分が入った炭酸入り検査水」を飲んではかった検査の血糖)で140 mg 以上あると食後高血糖と呼ばれ,心筋梗塞,脳梗塞,閉塞性動脈硬化症などの危険ありとなります.食事・運動療法,薬物療法を含めた治療が必要です.ご飯を食べた後140mg以上は食後高血糖だということです.
 そして,食後でも,いつはかったものでも,負荷の後でも,200 mg を超えれば糖尿病です.
 食後2時間値140 mg というと低い値だなと思われるかもしれません.高血圧の正常値120/80mmHgも非常に厳しい値だと思われます.糖尿病の早期発見,早期治療介入のため,この診断をする必要があり,正しく評価することが必要です.
 図5のように朝食,昼食,夕食,健康な人はおのおの140mgを超えないぐらいで推移していますが,食後,血糖がドーンと上がり200 mg に近い人、そしてそれらの人は将来糖尿病の形となっていきますから,食後の血糖が高い場合を見逃さないようにすることが大切です.
 
   3.HbAlc値の読み方

 ちょっと見なれない字ですが,HbAlc(ヘモグロビンAlc)とは,食事や運動に影響されにくく,いつ採血しても1〜2ヵ月前からの平均的な血糖コントロール状態をあらわします.
 これによって薬を変えたり,いろいろなコントロールをすることが可能です.しかし,1回とったHbAlcの値で糖尿病の診断をすることはありません.糖尿病の経過を見る上ではよい指標になります.つまり,HbAlc値は,1〜2ヵ月平均血糖の様子であるということです(図6).
 図7は,私が患者さんに説明している日本の標準です.今までしたお話は,私がどう思っているかではなくて,目本の標準ではどう考えられているかということです.「優」・「良」・「可」・「不可」とされて,「可]の中には「不十分」・「不良」があります.これを私は「昔の通信簿」と呼んでいます.「大変すぐれている」,「ややすぐれている」,「普通」,「やや劣る」,「劣る」,こういうふうに「通信簿」で考えて,優・良・可(不十分・不良)・不可と,HbAlcの値で治療の様子を評価しています.
   4.中性脂肪値の読み方
 中性脂肪値はメタボリック症候群の判定基準となるものですが,空腹時の採血で150 mg/dl 以上あれば,それは高中性脂肪血症です(図8).もちろん朝食,昼食,夕食で血糖は上がったり下がったりするわけで,中性脂肪値も上がったり下がったりします.しかしながら,次にお話しするLDLコレステロール(悪玉コレステロール)は,食事や1日の変化はあまりなく推移します(図9).したがって,もう皆さんおわかりのとおり,糖尿病になってくると,血糖は食事のたびに上がり,中性脂肪も上がるので,中性脂肪が食後高いようなことがありましたら要注意ということをここで覚えておいてください.

   5.LDLコレステロールの読み方
 LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は,図9のとおり1日の変化があまりなく,140以上であれば脂質異常症(昔の高脂血症)というものになります.治療には段階的な階層があります(図10)
 カテゴリー1.狭心症や心筋梗塞が一つでもあれば,目標は100 mg 未満に下げてください.
 カテゴリー2.脳梗塞,足の血管が狭くなって歩くと痛みが出る閉塞性動脈硬化症,先ほど申し上げた食後高血糖や,いつはかっても血糖が140mg以上あるような糖尿病.一つでもあれば,目標値は120 mg 未満.
 カテゴリー3.これに大体皆さん当てはまる方が多いんですが,男性で45歳以上,女性で55歳以上.または,高血圧,喫煙,冠状動脈疾患(狭心症,心筋梗塞など)の家族歴.そして次に申し上げるHDLコレステロール(善玉コレステロール)が40 mg 未満の方.目標値は,上記のいずれもなしは160mg未満,1〜2個ありは140mg未満,3個以上が120 mg未満とされています.
 おうちに帰ったときにそれぞれ皆さん自分はどれに当たるからどこまで下げなくちゃいけないかということをお考えください.
   6.HDLコレステロールの読み方
 HDLコレステロール(善玉コレステロール)は,40 mg/dl 以下だとよろしくない(図8).なぜなら,このHDLは高いほうがいいコレステロールだからです.先ほど来話題になっているメタボリック症候群は,男性で腹囲85 cm, 女性で90cm以上,かつHDLコレステロールが40 mg/dl未満の方はこの項目を満たしてしまうからです(図11).
   7.まとめ
 尿糖が出ていれば,一般に血糖値は170 mg/dl以上あります.空腹時血糖の正常植は100 mg 未満.100〜109 mg は正常高値とされています.食後血糖,随時血糖,いつはかっても140mg以上あれば食後高血糖,200以上あれば糖尿病です.HbAlc値は1〜2ヵ月の血糖平均の様子です. 中性脂肪の正常値は空腹時採血で150 mg 以下.食後高中性脂肪は,耐糖能異常,メタボと関係があります.LDLコレステロールの正常値は一般に140 mg 以下と健診では書いてありますが,それぞれの方の持つ危険因子によって,100,120,140,160になる.これについては,自分が当てはまる項目をごらんください.HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40 mg 未満であればメタボリック症候群と関係があるので,健診のときに必ず見ておかなくてはいけません.
はじめにもどる
東京内科医会事務局:東京都千代田区神田駿河台 2-5 東京都医師会館3階 
Tel. 03-3259-6133 Fax. 03-3259-6155