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パネルディスカッション「健診結果の読み方」
                    総合討論
吉 田 幸 子(東京内科医会理事),谷田貝茂雄(東京内科医会常任理事),
石 川   徹(東京内科医会理事),山 田 淑 儿(座長/東京内科医会常任理事)
 山田(座長)では,今までのご講演をふまえて先生方のお話をうかがえればと思います.
 まず,家庭でおはかりいただく血圧計をお持ちの方が大概おっしゃるのは,先生のところへ来てはかったのとうちではかったのと大違いだ,どうしてくれるみたいな話です.吉田先生,これはどういうふうに考えたらよろしいでしょうか.
 
 吉田 確かに,家庭血圧は診療所とか健診ではかるよりも10ぐらいの差があると思います.先ほど,血圧は時々刻々いろいろな原因で上がったり下がったりするというお話をしましたが,診療所や健診では,「これから血圧をはかる]「健診をする」という非日常的なストレスや緊張感がありますので,それが一番の原因です.したがって,健診のときは高く出て,家で落ちついてはかったときは低いというのが普通だと思います.
 逆なのは,先ほどお話ししたように仮面高血圧で,非常に予後が悪く,これはいろいろな合併症を起こしやすいので注意が必要ですが,普通は「白衣高血圧」,つまり,診療所ではかっかほうが高いのが普通だと思います.
 私は患者さんに,それぞれの血圧,高い低いともにすべての血圧はあなたの血圧ですといっています.はかるチャンスによってこれだけ差ができるということだと思います.ひとつには治療をするかどうかという判断のときに,また家庭血圧と診療所または健診の血圧値の差で医者が薬を選んで薬物治療をする,その一つの目安になります.
つまり両方の血圧値とも正しいと思います.
 
 山田 最近は血圧を記録する手帳みたいなものがたくさんあるので,ご家庭で記録していただくとありかたいです.そして,それをかかりつけ医にお持ちになって,指導を受ける,あるいは質問をしていただくというのがよろしいかと思います.
 
 続いて谷田貝先生にお問きしますが,昔ながらのインスリン療法を始めとする糖尿病の治療というのは激変しました.健診を受けられた方がそれを理解するにはなかなか難しいかと思うので,例えば,糖尿病の人がこんな自覚症状があったら危険という,そういうものはありますか.
 
 谷田貝 よくみかける例を一つだけお話ししますと,ずっと糖尿病のお話をしているにもかかわらず,お薬やインスリンの治療がなかなかできなかった方が「先生に体重減らせよといわれてたんだけど,いよいよ減ってきたんだよ! のどがかわく,ジュースがとってもおいしい.ペットボトルの水がおいしい.おしっこが出る.いやあ,ぽんと,体重が減ってきたんだ」といったときにはもう本当に要注意です.糖尿病は軽いものには症状は全くありません.お酒を飲む方や,体重がそれほど多くなくて糖尿病といわれていた方がやせてきたり,おしっこがたくさん出てきたり,のどか乾いてきたときには極めて重症の段階だということを覚えて帰っていただきたいと思います.
 
 山田 さて,今日は糖尿病の大ベテランの菅原正弘先生(東京内科医会副会長)が会場にいらっしゃいますので,お聞きしたいと思います.以前から内服治療をされていた方が血糖値のコントロールが悪くなり,最近はインスリンを導入されるケースが増えてきました.一般的にインスリンの管理は難しいですが,インスリン治療にしたほうがいいのはどういう場合でしょうか.
 
 菅原 経口薬を使っていても,HbAlcという血糖値の最近の1〜2ヵ月の血糖の平均が大体8%を超えてしまったような状況においては,お薬はもう既に無効になっている状況です.したがって,こういった状況においてはインスリン治療をぜひ行ってほしいと思います.
 そのまま経口薬で押して膵臓がくたびれてくると,インスリンが全くつくれなくなってしまうんですね.そうしたら一生インスリン治療をしなければいけないわけです.しかし,早い段階で一時的にインスリンに切りかえますと,その間膵臓が休めます.
 血糖が高いと,インスリンの働きが悪くなったり,膵臓からのインスリン分泌が落ちます.
 早い段階でインスリンを用い血糖値を良い状態にコントロールすると,再度胆臓からインスリンが出てきて,インスリンの働きもよくなって,インスリンを中止しても今までよりもっと少ないお薬でもっとコントロールがよくなります.HbAlcも6%から6.5%ぐらいで,より少ないお薬でコントロールできるということはしばしばあります.インスリンの総単位数が20単位をきると経口薬への変更を考えます.ですから,1〜2カ月間,場合によっては3ヵ月間ぐらいインスリンを使っていただけるとそういう効果が期待できますので,コントロール不良になりましたらためらわずにインスリンをつかっていただきたいと思います.
 ただし,食事療法と運動療法は基本なので,これをしっかりやって,かつコントロール不十分な場合にはインスリンを使うということになります.
 最近は,効果の持続する持効型インスリンというのが出てきましたので,例えば経口薬,SU薬を飲みながら,1日1回だけ持効型インスリンを打っていただくという方法も行われています.思ったほど痛くなくて,実際におなかに打ってみますと,インスリン注射に関しては痛みはもうほとんどなくなっています.中にはズボンの上からインスリンを打っている方もいらして,それほど毎回毎回消毒してきれいにしないと感染するというようなことはまずありません.皆さん方が思っているよりかは楽にインスリンを導入できる状況になっています.ぜひためらわずにインスリン注射を考えていただきたいと思います.その他,糖尿病患者さんが妊娠した場合や,手術時,胃腸炎などで食事の摂取が全くできなくなった時等は,インスリン治療にきりかえる必要があります.
 
 山田 ありがとうございます.HbAlcがなかなか下がらないという方は,ぜひかかりつけ医にご相談いただきたいと思います.
 最後に肝臓の詣ですが,脂肺肝には危険なものと,危険でないものがあるというふうに先ほどお話をいただきました.ただ,肝機能は通例この3つぐらいしか出てきておりませんので,異常があったときには果たして肝炎型なのかNASH型なのか,どれかよくわからないと思うんですね.
そういうときは,石川先生,どうしたらいいのでしょうか.
 
 石川 まず,健診で肝機能に異常が見つかったら,たとえほんの少しでも,これは大したことないから,あるいは自覚症状がないからということで,ほうっておくことがないようにということが第一です.最低でも画像診断,腹部の超音波の検査かCTの検査をしていただくことが大切ですし,先ほど鑑別の診断というところでもお話ししましたが,ウイルス性の疾患等がもしあったらそれはインターフェロン治療などをきちんとやっていただかなければいけませんので,そういう検査もあわせてやっていただくことがとにかく必要です.
 特定健診の検査項目というのはスクリーニングのいわば入り口の検査です.したがって,肝臓に異常があるのかないのかということしかわかりませんので,それ以上のエコーの検査,あるいは,その上で必要であれば入院をして肝生検等の検査まで進めなければいけないという方もいらっしゃるのではないかと思います.
 
 山田 ありがとうございました.肝機能に異常があったら放っておかないでください.裏に隠れている病気がたくさんあり得ますし,健診だけの3つの検査ですべてがわかるわけではありませんので,放っておかずに,ぜひかかりつけ医にご相談いただきたいと思います.
 
 谷田貝 最後に少し追加させていただきたいのですが,先ほど私がこの会場に入ってまいりましたら,ご婦入の方が「体脂肪」という言葉で「中性脂肪」のお話をしていました.先ほど宮崎先生やその他の先生方がお話しした「内臓脂肪」は,「中性脂肪」,「体脂肪」とは違います.「内臓脂肪」をおなかのへその高さで切って見ることはできないので,腹囲を測定しています.正常は男性の場合は腹囲85cm以下,女性は90cm以下です.中性脂肪というのは,血液検査でとった値を中性脂肪というわけです.
 体脂肪というのは,体重計を買うとついてくる体脂肪測定器械で,足と足の間の抵抗をほかって推測したものを,10何%とか20%とか,例えば,モデルさんは一けただとか,そんなことをいっているだけなので,そこを短絡しないように,正しい言葉を身につけるとよろしいと思います.
 
 山田 ありがとうございました.おへそ周りのカット面で内臓脂肪100 cm2以上がメタボだというのが今の基準です.ところが,胴長の人もいますしそうでない人もいますので,メタボの概念,おなか周りだけでは当てにならない.特に女性の場合は,内臓脂肪も多いけど皮下脂肪も多いという方もおられるんです.男性のおなかぽっこり型は大体当てはまります.そこで,メタボの概念のおなか周り幾つという女性の数値はあんまり当てにならないので,難しい話ですが血液でサイトカインを調べるという方法もないわけではないんですが,確立されていません.つまり,大まかにはメタボという概念はあるんですが,正確にいうとかなり差があるというふうに僕らは考えておりますので,これはこれからの宿題かなと思っていま
す.
 以上です.個別のご相談は,ぜひ後ほどの「医療相談会」でお聞きください.
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