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     第22巻2号・2006年12月
   健診事業の戦国時代?
                        東京内科医会 理事 須 藤 秀 明

 ここ数年、社会的な問題となっている子供のいじめと自殺、両親による子供の虐待など殺伐とした事件が多いなか、今年度の診療報酬もマイナス改定となり、医療を取りまく環境も暗澹としている.特に診療所の初診料・再診料を中心とする技術料の引き下げは日本医師会にはもっと抵抗していただきたかった。日本は物に対しての価値にはお金を払うが、形のないものに対しては認識も評価も低いのが現状である。作曲の著作権、世界的な発見に対する代償など欧米に比較するとまだまだ低い。これでは頭脳流出も致し方ない結果ではないだろうか。医師の技術料もしかり。我々の日々の経験や生涯教育によって得られる知識に対する代償はこんなものかと思ってしまう。
 
 2年後の平成20年4月に向けて、「医療費適正化計画」「健康増進計画」「地域ケア整備構想」「医療計画」という4つの計画が着実に進行している(日本医事新報11月号に主なスケジュールが掲載されている)。そのなかの「健康増進の見直し」については、2008年(平成20年)に老人保健法が失効し、健康増進法(新しい健康増進計画)が新たに執行される節目の年でもあり、その一環として生活習償病対策が重要課題となっている。
 
 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会が「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の中間評価報告書をまとめた結果では、高血圧、糖尿病などの生活習慣病は特に中高年男性では改善しておらず、開始時のベースラインより悪化している項目もみられ、全体としても十分な成果がみられていないとのことである。
 
 厚生労働省はこれらの結果も踏まえた具体的な取り組みとして「健診・保健指導の重点化と効率化]、「医療保険者による保険事業の取り組みの強化」、「都道府県の総合調整機能の発揮と都道府県健康増進計画の内容充実」を挙げ、糖尿病を中心とした生活習慣病の有病者と予備軍を減少させることにより、国民の健康増進・生活の費の向上・中期的な医療費の適正化を図る予定である。
 
 老人保健法の廃止とともに、高齢老健診が特定健康診査(糖尿病その他の生活習慣病に関する健康診査であり、現行の老人保険事業の基本健診と大幅な変更はない)にとって変わり、特定健診受診者のなかでメタボリック症候群の該当者と予備軍を対象に専門家による保健指導(特定保健指導)を徹底し、2015年度までに25%減少を目標に挙げている。これが実際に始まると健診受託側は健診の精度管理だけでなく特定保健指導も要求されることになる。そしてこれらの特定健診・特定保健指導事業は国・都道府県と医療保険者が協力し合い民間業者に委託され実施される図案となっている。
 
 特に特定保健指導については委託先として、病院・診療所や健診機関だけでなく民間企業(株式会社)が参画してくる可能性は大であり、健診事業は戦国時代を迎えようとしている。現状において、一般の診療所では健診専門に保健師や栄養士を確保し、特定保健指導を実施することは困難であり、新たに糖尿病療養指導士を育成する時間もない。今までのように地区医師会が健診事業(国保)のすべてを無条件で受託できる時代ではなくなってきていることに危機感をもつべきであろう。
 
 予防も含めた生活習慣病対策は極めて重要であり、積極的に進めていくことに対しての異論はないが、個々の健診者の生活環境も含めた総合的な指導をしていかなければ良い結果は得られない。健診の受診率を上げるためにも、開業医はホームドクターとしての役割を今一度見直すとともに、日々変化する医療環境に対応し、適合していかれるような情報収集能力をもたなければならない。そのためには会員に向けての情報発信の場としての我々東京内科医会の役割を考える良い機会ではないだろうか。
 
 東京が担当し、9月に開催された第20回日本臨床内科医学会は望月新会長を中心として取り組んだ節目の年であり、また新たな認定医制度が設けられた記念すべき会でもあり、新たな一歩を踏み出したところである。会員の増強も含めてさらなる発展のためには魅力ある学術的な企画も必要ではあるが、東内会を中心とし、各区または各ブロックごとのさらなる充実を図ることが必要であり、変化していく医療環境に対して、内科臨床の最前線に立っている会員の現状と現場の意見を吸い上げやすくするためにも各地区の組織作りが重要な課題ではないか。
 
 今後は日臨内では認定医制度のうえに専門医制度を構築する方向であるが、様々な学会の専門医制度が存在するなかにおいて、今後の医療情勢に適合した日々の臨床に直結するような日臨内独自の魅力ある専門医制度が望まれる。
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