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     第24巻1号・2008年8月
   新型インフルエンザに備える
                        東京内科医会 常任理事 武 石 昌 則

 2008年7月現在、懸念されている新型インフルエンザウィルスは全世界中で確認はされていない。しかし、過去を遡ると、1918年スペイン型インフルエンザ(H1N1)、1957年アジア型インフルエンザ(H2N2)、1968年香港型インフルエンザ(H3N2)がパンデミックを起こした歴史がある。こうした新型インフルエンザウィルスは10〜40年周期で流行してきた過去の例をみるとその懸念は払拭できない。さらに、現在地球規模で発生している高病原性鳥インフルエンザ(H5N1など)が、新型インフルエンザウィルスに変異し、新型インフルエンザ(型不明)の世界的流行の可能性が示唆されている。新型インフルエンザがどの程度の感染力をもつかについては現段階では予測できない。

 流行規模の想定について、政府は、日本の全人口の25%が感染し、医療機関を受診する患者数を最大2,500万人と推定しており、その数を実感する一つの例として、2004〜2005年にかけて大流行したインフルエンザの定点観測から推測すると、この時期にインフルエンザに罹患した患者数は1,770万人とされている。そう考えると、現在の医療機関数で到底対応できない患者数ではないという楽観視もできるが、問題はいざパンデミックになりかけた時に、はたしてどれだけの医療機関が診療を持続できるか疑問である。その対応の一つとして発熱外来(センター)を各地に設置する構想がある。しかし、私の地区医師会でも発熱外来を想定した模擬外来を試みたが、実際に防護服、フェイスシールドを装着したところ発汗が著しく、聴診音も充分に聴取できない状態で、医師一人当たり2時間の外来が限界である。またその発熱外来の医師の確保は担保されておらず、地区医師会にその責任の重圧が圧し掛かってくるだろう。
 
 新型インフルエンザ対応ワクチンは、そのウィルスが同定されていない現在では生産できない。高病原性鳥インフルエンザ(H5N1など)で生産したプレパンデミックワクチンは現在、1000万人分が備蓄されているが、このワクチンはあくまで現在流行している鳥インフルエンザに対するワクチンであり、新型インフルエンザに対する有効性が完全に確立されているものではない。政府では、抗インフルエンザウィルス薬の備蓄として、タミフルを2,500万人分、リレンザを135万人分を確保する予定である。
 
 医療機関として確保すべき備品として、N95マスク、ゴーグルまたはフェイスシールド、ガウン、エプロン、手袋等があげられる。また院外処方箋が進み、現状では医療機関に備蓄されている医薬品はごく限られているが、新型インフルエンザの流行に対する必要最小限の医薬品の備蓄は必要である。さらにWHOのフェーズ分類でフェーズ5〜6を想定すると、医療機関は混乱しライフラインの停止、労働力の低下による物資の生産流通の停止が想定され、食料、飲料水、トイレットペーパーなどの生活用品は最低限の備蓄が必要である。各医療機関が、この危機を認識し、新型インフルエンザに備える必要がある。
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