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     第27巻3号 ・2012年4月
   エバンジェリスト
                          東京内科医会 理事 若 井 安 理


  エバンジェリストをご存知でしょうか。ウィキペディアによると元々はキリスト教の伝道者のことですが、近頃は外資系IT企業で最新のIT技術をわかりやすく説明する役職をさします。日本IBMやマイクロソフトには正式な職位として存在します。日本IBMのエバンジェリストである西脇資哲氏の著書によると新しいテクノロジーや製品をかっこ良く、セクシーに見せるのが仕事だそうです。顧客に難解な技術解説をしたり、資料をたくさん作って渡すのではなく、「この製品カッコいいな」「使いたいな」「買いたいな」「いつ発売するのかな」―そんな風に思わせるのがエバンジェリストの仕事です。
 エバンジェリストにとって重要なのは“新しい価値”を伝えることです。必ずしも自社製品の宣伝をするのではありません。新しいIT技術を伝えることに重きが置かれ、間接的に自社製品の売り上げに貢献することになります。そのために、その技術を完璧に理解して使いこなせることはもちろん、その技術が好きであることも重要です。彼らの武器は“わかりやすく伝える技術”です。顧客に一瞬で注目を向けさせる“つかみ”、わかりやすい言葉、興味を起こさせる印象的なプレゼンテーションに磨きをかけます。ときにはプレゼンテーションの中身ではなくプレゼンテーションをした人物の印象が強く残ることがありますが、それも悪いことではないようです。
 しかしながら、最も重要なのは伝えるための“情熱”です。エバンジェリストのカリスマ、スティーブ・ジョブズは一度のプレゼンテーションで社会のインフラを変えてしまう力があります。彼のプレゼンテーション技術を解説した書籍は枚挙にいとまがないほどですから卓越した技術をもっています。しかし、彼のプレゼンテーションが人や社会を動かすのは彼の熱い“情熱”なのです。彼の情熱の源は必ずしも善意ではないかもしれませんが、自分が見つけた“新しい価値”で社会を変革していこうとする強い意志が感じられます。
 我々医師は患者さんに対するエバンジェリストではないでしょうか。エバンジェリストを医師、顧客を患者さんに置き換えても意味が通ります。悩める患者さんを前にして我々の“情熱”がスティーブ・ジョブズのそれに劣るとは思えませんので、“わかりやすく伝える技術”をIT業界のエバンジェリストに学びたいと思います。そして“新しい価値”(最新最良の医学知識、医療技術)を“わかりやすく”“情熱”をもって患者さんに伝えましょう。




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