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     第28巻2号 ・2012年12月
   ACCORD試験から思うこと
                          東京内科医会 理事 井 関 惠 子


 私は糖尿病を専門にしているのですが、ACCORD試験以来、臨床の場からのエビデンスの発信についてとりとめなく考えています。
 2010年のACCORD試験で、HbA1cの正常化を目指すとかえって死亡率が上がったため研究が途中で中止になったという報告が衝撃をもってなされました。それを読んだとき、あんな無理なことをすれば死亡率もそりゃ上がるだろうとまず思いました。しかし、目標値はもっとゆるくていいという論調には違和感をもちました。サブ解析の後、罹病期間が長く臓器障害が想定できる人には低血糖や体重増加を起こすことの危険を考慮して治療することが必要だというメッセージになりましたが、それは実際には「目標値にはいかないけれど仕方ないよね」と言いながらすでに行っていることだと思いました。これは、この人にこれ以上薬をふやせば低血糖が起こりそうだとか、食事療法がうまくいかない人にインスリンを増やしても太っていくばかりだという経験からくる感覚です。
 毎日の臨床は、生身の患者さんを前に個々の患者さんごとにリスクを総合的に考えて、現状を「これで良しとする」のか「まだまだで次に進む」のかの判断を積み重ねながら治療を進めていて、目標値を目指して突き進んでいるわけではありません。プロトコール下で行われた研究の結果と実臨床からでる結果は少し違うのではないかと感じました。
 今までのようにデザインされた研究に加えて、治療を進める判断過程も議論の土俵にあげてみたいと思います。「どういう判断」をして「どう治療」していったら「結果イベントの発症」はこうだったというようなデータの積み重ねができないものでしょうか。
 判断過程は単純ではなく、それを理論的に比較検討するにはどう表現すればいいのか不明ですが、その判断力こそが実地医家の臨床力だと思うので議論し評価してみたいと思います。




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