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     第30巻2号 ・2015年 2月
   産業としての医療と利益相反(COI)開示への疑問

東京内科医会 理事 瀬 底  正 彦


   近年、臨床医の知らないところで、医療で利益を目的とした事業が行われ、計画されています。混合診療の拡大、外国人を対象とした医療特区、投資家から資金を集め病院を建て、その賃料を配当金とするヘルスケアリート、既に大手IT企業はネット経由で遺伝子検査ビジネスを行っています。健康に関わるものでは、遺伝子組換え食品(主に大豆、菜種、トウモロコシ)です。強い種子を巨大企業が独占し、世界中に販売していますが、安全性の確認はありません。厚労省も29品を安全としていますが、根拠は不十分です。これら、利益目的の事業には反発しますが、医薬品、医療機器の新開発は総力をあげて、行われるべきものでしょう。医薬品、医療機器の日本の貿易収支は、年間3兆円の赤字です。これが収支0なら、そのぶん医療費が出せます。この赤字の主役は癌治療薬(主に分子標的薬)と治療用機器(手術ロボット、血管治療用ステントなど)で年々増加傾向です。ここが抑えられれば、私達への配分も期待できます。
 私事になりますが、昭和40年代前半、私は消化器内視鏡機器の開発に関わりました。当時、胃カメラ(オリンパス製)はわが国では普及しつつありましたが、世界的には評価は低く、米国で作成されたファイバースコープも臨床使用に耐えるものではありませんでした。このスコープの実用化は、町工場(町田製作所)と大学の域を超えて集まった20人位の医師の努力で4〜5年で成されました。この技術は、東芝、富士フイルムに継承され、オリンパス社も同様のものを作り、現在日本製が世界のほぼ100%を占めています。この時、技術者、医師の努力、協力の他、国も相当額の科研費を複数年で交付してくれました。
 医薬品、医療機器の開発には、臨床医、研究者、産業界、行政の緊密な協力が必要です。
 LED開発者の中村修二教授も「開発はしたが、日本はビジネスで出遅れた」と述べていました。iPS細胞の臨床化(産業化)でも、同様にならないことを祈るばかりです。胃ピロリ菌の発見者が、検査キット会社の経営に深く関わり、iPS細胞研究で山中教授のライバルの米国の大学教授は、自らベンチャー企業を設立したと聞かされました。このような状況下で、最近の学会で目立つCOI開示で、業界と関わりのないことの表明が義務化されていることに違和感を感じます。医、産、学、官が一体でなければ、医療産業の発展も、ひいては医療費の増大も望めず、この開示が徹底されれば、当会の講演会の演者も限られ、私達に医療情報が届かなくなる恐れもあります。学会も大局を見失いたくないものです。



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