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     第31巻3号 ・2016年
   生きている限り歩き続ける ―健康寿命の延伸を目指して―

東京内科医会 理事 染 谷 泰 寿


   小生のクリニックは東京都狛江市にあり、「生きている限り歩き続ける」を目標として開業し、今年で12年目を迎える。当院に通院している患者さんの平均年齢も開業当時は60歳くらいであったが、現在では65歳になろうとしている。これは、日本全国のクリニックに通院している患者の平均年齢とほぼ等しい。  約10年後(2025年)は、団塊の世代が全員後期高齢者となる75歳を迎え、当院に通院している患者さんの平均年齢も70歳を超えることが予想される。このような超高齢化社会では「健康寿命の延伸」が望ましい。健康寿命の延伸は、健康日本21(第2次)における中心課題となっている。この背景としては、平成25年の段階において、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差は、男性で9.02年、女性で12.40年と報告されている。平均寿命と健康寿命の差、つまり介護が必要となる不健康な期間が男女ともに10年前後存在し、今後平均寿命の延伸と健康寿命の差がますます拡大すれば、医療費や介護給付費の多くを消費する期間が増大することになる。平均寿命と健康寿命の差(いわゆる介護期間)をつくる原因としては、脳血管疾患、心臓病、関節疾患、骨折・転倒、認知症、高齢による衰弱、その他に分けられる。介護が必要になった原因は男女で大きく異なる。脳血管疾患・心臓病を原因として介護が必要になる割合は、男性37%、女性19.6%である。しかしながら、関節疾患、骨折・転倒、認知症、高齢による衰弱で介護の原因となるのは、男性32%であるが、女性では58%に及ぶ。このデータが示すのは、健康寿命を延伸するためには生活習慣病を防ぐと同時に、フレイル(虚弱)・サルコペニア(筋力低下)・認知症の予防が大切であるということである。  私たちはBMIにかかわらず、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の患者さんに対し、具体的に食事制限と有酸素運動(散歩など)を指導してきた。しかしながら、やせている患者さん(特に女性)に食事制限をするとやせが助長され、フレイル、サルコペニアに至るケースや肺炎を発症するケースが散見される。日本人の食事摂取基準2015年版では、70歳以上に対して、BMIの範囲21.5〜24.9 kg/m2が目標になった。高齢の生活習慣病の管理には従来の通りの指導ではなく、適切な栄養摂取と筋力向上のためのトレーニングを指導することが望ましい。  私たち開業医は、一人ひとりの患者さんに対して身体機能や生活背景を踏まえた診療体制を整えると同時に、平均寿命と健康寿命の差を短縮すべく、高齢者の疾病予防と健康増進、介護予防にも積極的に取り組み、この超高齢化社会を医療そして社会の面から支えていく必要がある。これからも「患者さんが生きている限り歩き続ける」を目指して診療していきたい。


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