第27巻−3号
- 東京内科医会 会長に就任して
- エバンジェリスト
エバンジェリスト
エバンジェリストをご存知でしょうか。ウィキペディアによると元々はキリスト教の伝道者のことですが、近頃は外資系IT企業で最新のIT技術をわかりやすく説明する役職をさします。日本IBMやマイクロソフトには正式な職位として存在します。日本IBMのエバンジェリストである西脇資哲氏の著書によると新しいテクノロジーや製品をかっこ良く、セクシーに見せるのが仕事だそうです。顧客に難解な技術解説をしたり、資料をたくさん作って渡すのではなく、「この製品カッコいいな」「使いたいな」「買いたいな」「いつ発売するのかな」―そんな風に思わせるのがエバンジェリストの仕事です。
エバンジェリストにとって重要なのは“新しい価値”を伝えることです。必ずしも自社製品の宣伝をするのではありません。新しいIT技術を伝えることに重きが置かれ、間接的に自社製品の売り上げに貢献することになります。そのために、その技術を完璧に理解して使いこなせることはもちろん、その技術が好きであることも重要です。彼らの武器は“わかりやすく伝える技術”です。顧客に一瞬で注目を向けさせる“つかみ”、わかりやすい言葉、興味を起こさせる印象的なプレゼンテーションに磨きをかけます。ときにはプレゼンテーションの中身ではなくプレゼンテーションをした人物の印象が強く残ることがありますが、それも悪いことではないようです。
しかしながら、最も重要なのは伝えるための“情熱”です。エバンジェリストのカリスマ、スティーブ・ジョブズは一度のプレゼンテーションで社会のインフラを変えてしまう力があります。彼のプレゼンテーション技術を解説した書籍は枚挙にいとまがないほどですから卓越した技術をもっています。しかし、彼のプレゼンテーションが人や社会を動かすのは彼の熱い“情熱”なのです。彼の情熱の源は必ずしも善意ではないかもしれませんが、自分が見つけた“新しい価値”で社会を変革していこうとする強い意志が感じられます。
我々医師は患者さんに対するエバンジェリストではないでしょうか。エバンジェリストを医師、顧客を患者さんに置き換えても意味が通ります。悩める患者さんを前にして我々の“情熱”がスティーブ・ジョブズのそれに劣るとは思えませんので、“わかりやすく伝える技術”をIT業界のエバンジェリストに学びたいと思います。そして“新しい価値”(最新最良の医学知識、医療技術)を“わかりやすく”“情熱”をもって患者さんに伝えましょう。
- 素朴な疑問 ―脂質異常症って何ですか?―
- 184
- レム睡眠行動障害を呈するレヴィー小体型認知症の4例
- 192
- 注意すべき認知症
- 198
- 末梢血単核球細胞移植が著効を示した閉塞性動脈硬化症の1症例 末梢動脈疾患に対する末梢血単核球細胞移植
- 205
- [東京内科医会 第184回臨床研究会 抄録]
- 212
- 慢性腎臓病患者に対する薬剤治療
- 217
- 慢性腎臓病(CKD)診療の最近の動向
- 222
- 健康診断で白血球増加を認め慢性骨髄性白血病と診断された2例 慢性骨髄性白血病治療の最近の動向
- 227
- 東京医科歯科大学医学部附属病院における医療連携
- 234
- 糖尿病の知られざる合併症
- 236
- 地域包括ケア
- 244
- 地域包括ケアと東京
- 245
- 先輩医師をたずねて(9)
- 252
- 短歌
- 253
- 理事会報告
- 254
- 会員の動向
- 260
- 投稿規定
- 261
- 編集後記
- 262