第26巻−2号
- 暖かな医療の提供
暖かな医療の提供
最近、世の中すべてにおいて暖かみが感じられない気がする。相手に対してクレームが多すぎる。学校においてはモンスターペアレント、病院においてモンスターペイシェントが良い例である。これ以外にもすべてに対して現代の私達はクレームが多すぎるのではないだろうか。コンピューターの時代になり情報過多になりすぎているのではないか。その影響で相手に対して過度な要求が多すぎる気がする。相手も人間であるし神様ではないのである。そこのところをもう少し考えてあげれば相手に対して寛容になれるのではないだろうか。
こんな時代だからこそせめて医療においては患者さんが暖かい気持ちになれるようにしたい。臨床医として患者さんに安心で信頼される暖かい医療を提供したい。そのためにはどうすればよいか。
第一に、正しい診断と治療ができなければいけない。そのためには医学的知識を常に最新の状態に保つよう勉強することが必要となる。教科書やインターネットなどにより勉強する。しかし、ひとりで勉強するのも独り善がりになりがちなので、この臨床内科医会に入会することにより大学病院などでの講演会に出席して他の内科医の意見を聞いたり、会誌を購読したり、さらにエコーの実践講義に参加したりしながら最新の医学の流れをつかむ。また、患者さんが日々読んでいる新聞の医学記事に目をとおす。患者さんに新聞記事の話題をふられたとき、すぐに対応できるようにしたい。最近ではサプリメントの情報も入手しておきたい。
第二に、患者さんの話によく耳を傾けなければいけない。つまり、患者さんと向かい合ってよく診察する。最近は医者がコンピューターの画面ばかり見て患者さんの方を見ないことがあったり、検査データのみ見て患者さんの身体に触れないこともあるらしい。そのようなことがないように初心にもどり、患者さんの入室時からよく観察(視診)し、患者さんの話を良く聞き(問診)、それによって患者さんの体に触れ(触診)、必要とあれば検査するようにしたい。そして、正しく診断していく。基本に忠実に当たり前のことを当たり前に実直に診察する。
第三に、患者さんにやさしく対応していきたい。患者さんの目を見て真摯に丁寧に対応したい。最近、患者さんにやたらと「様」をつける傾向にあるが、これが患者さんに対してすべて丁寧なのか今一度考えたほうが良い。患者さんは病気で来院しているので言葉でなく思いやりの心をもって対応したい。患者さんと親しくなっていくといろいろな悩みを聞くようになる。お坊さんや神父さんのように接することが理想である。しかし、現実には無理なのでせめてそれに近づくために教養を高めていきたい。
以上により、世の中がどんなにふうになろうとも患者さんに信頼される心のこもった暖かい医療を提供していきたい。
- 当診療所で過去10年間に認められた腫瘍疾患の検討
- 新型インフルエンザ(インフルエンザA/H1N1 2009)発生からこれまで,そしてこれから
- 新型インフルエンザワクチンの使用経験について
- 新型インフルエンザの治療臨床的見地から─重症化の社会的背景と医学的要因
- t-PA静注療法における早期再開通現象について
- 脳梗塞の診断と治療
- 抗ウイルス剤抵抗性のB型慢性肝炎の1例と皮膚梅毒を合併したB型急性肝炎の1例
- B型肝炎マネージメントの実際
- 分子の医療,分母の医学─症例報告の勧め─
- 東京内科医会に期待する─神津名誉会長に聞く─
- 先輩医師をたずねて(5)小林 之誠 先生(杉並区医師会)
- 東京内科医会とわたし
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- 短 歌
- 編集後記