後期高齢者医療制度と「かかりつけ医」そして「総合科」「総合医」
ある先輩医師が「かかりつけ医というのはそもそも患者さんがそれぞれ『私のかかりつけ医は○○先生です』というものであったはず、それを医師が自ら、かかりつけ医などと称するのはいかがなものか」と話されるのをうかがって、なるほどと合点がいったのであるが、このかかりつけ医をめぐって来年度から実施される予定の後期高齢者医療制度の診療を担当する医師としての「公的なかかりつけ医」が議論されており、また厚生労働省では「総合科」、日本医師会においては「総合(診療)医]という構想も動き出している。
後期高齢者医療制度における診療報酬の在り方について検討している厚生労働省社会保障審議会医療部会で同省保険局医療課長は,「後期高齢者を総合的に診る医師を活用することで診療報酬を組み立てていきたい」としている。全国自治体病院協議会長の委員は「多くの病気を抱える後期高齢者への対応は、すべてのかかりつけ医ができるわけではない。対応できる医師の養成が必要」と述べ、全自病などが創設した地域包括医療評価認定制度などの認定制度を活用するよう求めている。さらに厚労省は医道審議会診療科名標榜委員会において新たな診療科として「総合科」の新設を提案しており、国が「総合科医」を認定、初期診療は総合科医が行い将来的には総合科の診療報酬を手厚くする仕組みを考えていく方針という報道までがなされている。また、この3月に家庭医療関係3学会(日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療学会)は、家庭医機能を担う専門医の認定を合同で行うことで合意をみている。
日本医師会は、本年1月に「在宅における医療・介護の提供体制一『かかりつけ医機能』の充実一指針」を発表し、「将来ビジョンを支える3つの基本的考え方」と「将来ビジョンを具現化するための医師、医師会への7つの提言」を示している。加えて日医認定「総合(診療)医」の具体化に向けて検討を進めており、現在、研修カリキュラムを作成中で、総合医の認定については実技を含む研修や5年ごとの更新制など日医認定産業医のような方式の試案が検討されているとのことである。
かかりつけ医の機能は全国均一のものではなく、その地城によって異なるのではないか。いわゆる僻地といわれるところと、東京のような都会で近隣に病院や各科の開業医が存在しているところで地域から求められる「かかりつけ医」としての役割、機能が同じとは思えない。また、東京都内でも各行政区やさらに細かい「地域」での診診、病診連携などをみれば、そこでのそれぞれの医師の役割は個別性の強いものであり、一律にくくれるものではないだろう。まずは現在、実際にかかりつけ医として多くの患者さんの診療にあたっている私たち臨床医が、その地域で要求されるかかりつけ医機能の充実に努めることが重要であり、その上で今後の政策動向もふまえた対応が求められると思う。