会誌:第25巻−1号[目次]

東京内科医会 市民セミナー2009,第23回 日本臨床内科医学会,東京内科医会 心臓・頚動脈エコー実地研修会,川上記念賞第1回受賞者 決定
巻頭言
東京の地域医療東京内科医会 会長 望月 紘一
講演
糖尿病腎症の診断と治療富野 康日己
B型・C型肝炎の日常診療泉 並木
セミナー
肺癌の画像診断と呼吸障害近藤 哲理
大腸癌の内視鏡診断神保 勝一
大腸癌の手術療法石原聡一郎,他
乳癌の画像診断と手術療法松永 忠東
乳癌の薬物療法一腫瘍内科の立場から-高野 利実
東京内科医会 臨床研究会
NSAIDs負荷試験がなされたアスピリン喘息疑いの2症例石森 絢子,他
アスピリン喘息の診断と治療熱田 了
起立性低血圧による失神発作を繰り返したパーキンソン病の一例波田野 琢,他
パーキンソン病のup to date服部 信孝
医療連携室紹介
順天堂医院における病診連携高橋 和久
東京内科医会 第22回 医学会
日本海裂頭条虫症の一例瀬底 正彦,他
特集 健康食品・サプリメントー光と彰一
はじめに石川 徹
健康食品に関する安全性情報共有事業について江本 秀斗
健康補助食品・サプリメントに関しての東京内科医会・日本臨床内科医会の取り組み菅原 正弘
健康食品における健康被害の症例および新宿区医師会の取組み一内科医の立場から-丹羽 正幸
健康食品・サプリメントによる有害事象の見分け方一皮膚科医の立場から-大路 昌孝
ひろば

先輩医師をたずねて(1)三浦 恒祐先生(目黒区医師会)

短歌清水 五百子,林 宏匡,横田 英夫
理事会報告
会員の動向
投稿規定
編集後記山田 淑儿

東京の地域医療

東京内科医会 会長 望月 紘一

医療崩壊の危機といわれて久しく、地域医療の極めて厳しい状況が主として地方から報告されている。地方の基幹病院の閉鎖、産科医療機関数の減少等々であり、医師の絶対数の不足には悲鳴に近い声さえ上がっている。それでは、東京における地域医療は如何であろうか。地方ほどの深刻な状況は未だ実感できないものの、産科の救急患者の受け入れ先が決まらずに不幸な転帰をとった事例は記憶に新しい。また、各地区の主要病院の産科の縮小、閉鎖、内科の一部の専門分野の外来の閉鎖などは、もはや珍しくないといえ、東京でも本格的対策の実行が望まれる。

国の予算のうち、社会保障費の毎年2,200億円削減の方針がようやく転換され、また医学部学生の定員が増加されても、その効果が医療の現場に現れるのは遠い将来である。

東京のような医療機関数の多い特殊な地域で、直ちに行えることは何であろうか。それは現在の医療資源の有効な活用であり、いいかえればムダのない医療提供であろう。それには、診療所と病院のこれまで以上の役割分担と、その上でのより密接な精度の高い連携が不可欠である。

我々の診療所での毎日の診療にムダや不必要な部分はないだろうか。専門病院には、本当に病院での高度な医療が必要な患者だけが受診しているのであろうか。残念ながら、ムダや不必要な部分が全くないとは言えない現状であろう。ムダが無くならない理由には、現在の診療報酬体系の問題もあるが、いわゆる「念のための」検査を希望する患者の問題もある。たとえば不必要な検査をなくすためには、入念な問診と丁寧な診察と、その上に時間がかかる説明が必要であるが、それを可能にするものは医師の高度な能力と経験と患者からの信頼でありそれがあまり評価されていない現在の診療報酬体系の改革である。

兵庫県のある地域で、小児科診療を守るために、母親達が受診の必要性をよく考え、時にはそれを自制することにより小児科医の負担を減らすよう運動をしたという事例は、患者側からムダを無くすことを考えるものであり、今後の医療を変えていく1つの方向の象徴と思われる。

地域医療を守るために我々がすぐに出来ることは、毎日の診療の中でのムダを省き、患者にはよく説明して理解を求めることであり、それが可能になるよう自己の診療能力の向上に務め、一方で、診療報酬制度の中で基本的診療のより高い評価を要求してゆくことと思われる。