第6波
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波は大規模な流行となり、多くの人々を翻弄し続けている。そして我々が知らない場でも多くの職種の人々の懸命な格闘が続いている。そこで今回は、特に第6波の特徴を如実に反映した保育園での大規模クラスターを紹介し、多職種の人々の奮闘に敬意を表したい。
重症者が多発し緊張感を強いられた第5波も令和3年9月になると急速に終息に向かい、さらに新型コロナウイルスワクチン接種が順調に進むとともに、10月からはCOVID-19罹患者数は激減した。このまま終息することを願っていたが、感染症の専門家は「第6波は必ず来る」と警鐘を鳴らしており、また海外ではオミクロン株という感染力が極めて高い得体の知れない変異株が見いだされ、欧米では毎日何十万人という信じられない感染者数が報告されていた。漠然とした不安を感じながらも何とか無事に年を越せたと思った矢先に、このオミクロン株が日本にも検疫をすり抜けて市中に入ってきたとの報道を耳にするようになった。この不安が現実のものとなったのは1月9日、10日の連休前後からである。新型コロナウイルスの感染に対して子どもは安全であるという神話が崩れ、しかも子どもから大人へと感染が拡大しているのである。当院でも乳幼児と取り巻く家族の間でのCOVID-19罹患者が急増していくなか、千葉の病院から子どもの発熱者の8割がCOVID-19であるとの連絡を受けた。そしてその直後に、ある保育園での大規模なクラスターに直面した。なお、この保育園では日頃から出来る限りの感染防止策を実施していた。それは1月、偶発的に1歳児に実施したPCRから始まった。この園児は軽い風邪の症状のみであったが、保護者たっての希望で検査が行われ、陽性が判明した。翌日にはさらに1名の園児、翌々日には9名の園児と職員1名が陽性となり、保育園の閉鎖への対応が進められた。その後は爆発的に増加し、わずか1週間足らずでトータルで園児35名、職員16名の陽性が判明した。巻き込まれた家族を含めると罹患者の総数は計算できない。保育園は最初に園児の陽性が判明してから3日後には1週間ほど閉鎖し、何とか流行を食い止めたが、この間に残りの職員は多忙を極め、まさに不眠不休の対応となった。約100名の園児の保護者への連絡と情報収集、園内の徹底した消毒、電話がなかなか繋がらない中での区役所の関連部署との折衝、そして現状の把握と今後の対策と想像を超えた苦労があった。このように保育園のクラスターは高齢者施設でのそれとは質の異なった社会的な影響を持つ。その最大の要因は保育園では保護者が仕事に従事していることである。そのため閉園の見極めは難しく、保護者が納得できるよう個別の説得が必要となってくる。保育園は一連の経過を正確に記録し総括し、今後に生かそうとしている。
以上の如く医療職以外にも多くの職種の人々が懸命に戦っている。今は全ての関係者に「本当にお疲れ様でした」の言葉しかない。