会誌:第38巻-1号[目次]

令和3年度 川上記念賞
東京内科医会 第38回セミナー アルバム
東京内科医会 第35回医学会 アルバム
巻頭言
第6波依藤  壽1
肝疾患Webセミナー
糖尿病と肝疾患の関連  小木曽智美2
C型肝炎治療の進歩と肝繊維化改善がもたらすbenefit 木村 公則8
消化管最新医療フォーラム
病態からみる炎症性腸疾患 三上 洋平,他11
東京内科医会 学術講演会
変貌する糖尿病治療
─実臨床において経口GLP-1受容体作動薬をどう使う?─ 菅原 正弘15
東京内科医会 第218回臨床研究会
Parkinson病~近年の診断・治療方針~ 村上 秀友27
HCVは治癒する時代へ
―HCV患者さんの拾い上げへの取り組み― 及川 恒一31
炎症性腸疾患治療の近未来 猿田 雅之35
東京内科医会 第219回臨床研究会
心房細動アブレーションの現状と今後の展望 山下 省吾42
神経体液性因子から考える心不全治療 名越 智古47
意識障害と内分泌疾患 ―症例を通して内分泌緊急症を考える.
副腎クリーゼ/副腎不全について― 山城 健二51
糖尿病薬物療法の変遷と未来展望 横田 太持55
医療連携室紹介
病診連携の課題と今後 ― with corona or post corona ― 石川 智久61
特集「開業医の医療トラブルQ&A」
座談会:開業医の医療トラブルQ&A
桑原 博道,清水惠一郎,石川  徹64
臨床の現場から
塩のレガシー効果 高橋 俊雅90
先輩医師をたずねて32
神保 勝一 先生(江戸川区医師会) 92
短 歌
林 宏匡,横田 英夫 93
東京内科医会理事会議事録 94
会員の動向 104
東京内科医会会誌投稿規定 105
編集後記高橋 俊雅 106

第6波

東京内科医会 常任理事 依藤 壽

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波は大規模な流行となり、多くの人々を翻弄し続けている。そして我々が知らない場でも多くの職種の人々の懸命な格闘が続いている。そこで今回は、特に第6波の特徴を如実に反映した保育園での大規模クラスターを紹介し、多職種の人々の奮闘に敬意を表したい。

重症者が多発し緊張感を強いられた第5波も令和3年9月になると急速に終息に向かい、さらに新型コロナウイルスワクチン接種が順調に進むとともに、10月からはCOVID-19罹患者数は激減した。このまま終息することを願っていたが、感染症の専門家は「第6波は必ず来る」と警鐘を鳴らしており、また海外ではオミクロン株という感染力が極めて高い得体の知れない変異株が見いだされ、欧米では毎日何十万人という信じられない感染者数が報告されていた。漠然とした不安を感じながらも何とか無事に年を越せたと思った矢先に、このオミクロン株が日本にも検疫をすり抜けて市中に入ってきたとの報道を耳にするようになった。この不安が現実のものとなったのは1月9日、10日の連休前後からである。新型コロナウイルスの感染に対して子どもは安全であるという神話が崩れ、しかも子どもから大人へと感染が拡大しているのである。当院でも乳幼児と取り巻く家族の間でのCOVID-19罹患者が急増していくなか、千葉の病院から子どもの発熱者の8割がCOVID-19であるとの連絡を受けた。そしてその直後に、ある保育園での大規模なクラスターに直面した。なお、この保育園では日頃から出来る限りの感染防止策を実施していた。それは1月、偶発的に1歳児に実施したPCRから始まった。この園児は軽い風邪の症状のみであったが、保護者たっての希望で検査が行われ、陽性が判明した。翌日にはさらに1名の園児、翌々日には9名の園児と職員1名が陽性となり、保育園の閉鎖への対応が進められた。その後は爆発的に増加し、わずか1週間足らずでトータルで園児35名、職員16名の陽性が判明した。巻き込まれた家族を含めると罹患者の総数は計算できない。保育園は最初に園児の陽性が判明してから3日後には1週間ほど閉鎖し、何とか流行を食い止めたが、この間に残りの職員は多忙を極め、まさに不眠不休の対応となった。約100名の園児の保護者への連絡と情報収集、園内の徹底した消毒、電話がなかなか繋がらない中での区役所の関連部署との折衝、そして現状の把握と今後の対策と想像を超えた苦労があった。このように保育園のクラスターは高齢者施設でのそれとは質の異なった社会的な影響を持つ。その最大の要因は保育園では保護者が仕事に従事していることである。そのため閉園の見極めは難しく、保護者が納得できるよう個別の説得が必要となってくる。保育園は一連の経過を正確に記録し総括し、今後に生かそうとしている。

以上の如く医療職以外にも多くの職種の人々が懸命に戦っている。今は全ての関係者に「本当にお疲れ様でした」の言葉しかない。